その後、吸いつくように唇が重なった。
柔らかい先輩の唇がゆっくりと重なったのもつかの間。
先輩の舌で口をこじ開けられる。
そのまま舌が口内に侵入してくる。


今まで触れるだけのキスだったものが。
いきなりフレンチキスにまで進展する。


突然の行動に驚いた私は。
咄嗟に先輩のシャツを握り締めた。


口内をゆっくりとなぞるように舌を動かされる。
舌を絡ませた後、先輩は私の口の中から飴を奪っていった。
そして舌を抜き、触れるだけのキスに戻る。
その時、自分の口内で飴を砕いた先輩は。
飴の破片をまた、私の口内に戻すように舌を侵入させた。


口端からどちらのものか分からない唾液がこぼれ出す。
時間にしたらほんの数分の出来事だったのだろう。
それでも私からしたらもう何時間も唇を合わせていたような。
それくらい濃厚な時間だった。


唇が離れた後、ようやく息ができる気がした。
咳き込みながら酸素を求める。
涙がにじんだ瞳で先輩を睨みつけると。
当の本人は平然とした顔をしていた。


「オレンジ味だな。悪くない。」


口内に残った飴の破片をかみ砕く。


これからオレンジを見るたびに思い出すんだろう。
今日のこのキスシーンを。
初めてのフレンチキスは息もできないほど苦しくて。
そして溺れた。深い深い沼にはまったように。
刺激的な感覚に身をゆだね、私は堕ちていった。