少なくとも、ここで一緒に過ごしている先輩は。
御曹司でも、王子様でもない。
ただの藤川悠斗だった。


私達と何ら変わりのない。
普通の、男の子。


……そういえば。


「先輩って、好きな人いないんですか?」


「なにいきなり。」


「いや、先輩の浮ついた話って聞かないなあって思って。」

先輩の事を好きだっていう子はちらほら見かける。
それでも見ているだけで満足っていう子ばかりで。
好き、というか憧れの方が強い印象を受けた。


確かにこんな完璧超人と恋愛なんてしようと思ったら。
自分の低スペックさにみじめになるだろう。


「程よく恋愛してるよ。」


「程よく、ねえ。」


「そう、程よく。」


遊んでいる、と解釈してもいいのだろうか。
濁して答える先輩に何となくすっきりしない。
釈然としないっていうか。
まあ、なんでもいいんだけど。


と言っても一通りは経験してそうだなあ。
相手に困ることはなさそうだし。
未経験な先輩とか想像できないや。
大きくリードしてくれる大人な先輩、がいちばんしっくりくる。


「広瀬は?」