霧が立ち込める、そんな場所の中を、あたくしは独りで歩いていた。

『誰ぞ、おられるか。』

如何してなのかしら。
あれからずっと歩いているのに、感覚が、皆無なの。

『三瀬。』

誰、あたくしを呼ぶのは。
それも、知っている声だわ。

『あ…………』

鮮やかな若竹色の映える大陸風の衣裳。
金色に輝く簪、その先にあるのは緑色の玉。

もしや、葵様……………?

『葵様でいらっしゃいますか?』