「青丹様。」

三十路を超えたか超えぬか、それくらいの女房、逢鈴が話しかけてきた。

逢鈴は、葵様に仕えていた第二の女房。
第一は和泉という女房であった。

「御館様が、お呼びで御座います。案内致します。此方へ。」

「御祖父様が?」

「はい。」

逢鈴は下げていた頭を上げて、私をそのまま御祖父様のおられる寝殿まで連れていかれた。

「青丹。」

「はい。御祖父様。ご機嫌は如何ですか?」