「一の君。」

後ろから、誰か、声をかけてきた。
お母様みたい。

「ごめんなさい。私のせいね。本当に、お前に迷惑を掛けてしまって。」

迷惑?
冗談じゃない。

「お母様、私に、罪はありませんわね。」

すべて、お母様のせい。

「そうね………でなきゃ、こんなに落ちぶれたり、しなかったわ。」

お母様は、身分の高くない、我が父親と駆け落ちした。

遠く遠く、昔の話だ。