咲いた徒花

「其方、この邸の女房殿か。」

「ええ、そうで御座います。」

「しかし、何故こんなに遅くに、一人で?そち、顔を見せよ。」

え、顔を?
それは、いくらなんでも、無理だわ。

ご覧遊ばせ。
今は、満月なの。

あたくし、被衣も被ってないのだから、顔が、見えてしまうわ。

見られたくは、ない。
こんな、おぞましい右半分。

「御容赦、下さいませ。とても、見せられるような形はいたしませぬよ。」

ゆったりとそう告げて、更に深く被衣を被った。