咲いた徒花

「女房殿。」

知らない声で、ボソリと、誰かが耳元で囁いた。

「だ、誰ぞ…………?」

女房にしては背が高いし、少し声も低かった。

「誰?」

確か、このお邸には、今、御館様の甥が来ているとか、なんとか。

「もしや、御館様の、甥御様で?」

憶測ではあったものの、かなり確信はあった。

「いかにも。」

ああ、やはりね。
あたくし、昔から勘だけは、良いのね。