ひとつ、昔話を、しよう。


昔、右大将家には、三人の姫君がいた。

葵、桜、若草の三人だが、葵は人でなかった。そして、桜は若死にした。

桜は不器用で器量も身分に追いつかなかったのだが、一人、恋人がいた。

忍、という。

彼は死んだ桜を忘れられなかったようだ。意地の悪い。

その頃、三女、若草は女御として、既に上がっていた。

「若草の女御様」なんて、飾り物で、実際は、なんら、上流の姫君には似つかなかった。