【長完】Keeper.l

流石に、神龍の奴らの前ではお姫様呼びはできないし。だって、暗に邪魔でお荷物って言ってるみたいじゃない?

それに、女の子の友達なんていたことないし。だからなんて呼べばいいのか、いまいち良く分からない。

「ああ、そうだ、女。お前に渡し忘れたものがあった。」

『渡し忘れたもの?』

鞄の中をガサガサも漁る、金髪。

ガサガサと漁るって言ったけど、入っているのはどうせ勉強道具でもなくゲームかお菓子だろう。

「これだ。」

そう言って、手に持っているものは……。

『お弁当?』

「ああ。俺たち神龍は弁当なんだ。幹部以上のは俺が作ってる。

飯担当は、俺だ。

律は、掃除、洗濯担当だ。他のやつは家事とか出来ねぇから。」

薄青紫色の保冷バッグの、お弁当だった。

『あり、がとう。』

「なんだよ」

『いや、なんかあんたが料理できるって以外だと思ったのと、

お弁当って、記憶の中で作ってもらったこと無いかもしれないから。

あったとしても、忘れちゃうくらい昔だったから、なんか……。』

「そうか。嫌いなもんあったら悪い。」

戸惑ったように私の頭を撫でる手は、暖かくどこか不器用だった。

何となく、金髪との距離は縮まった気がした。

だけど、きっと。

この人は、人に近づくのを恐れてる。仲良くなるのに、恐れを抱いている、気がする。

まぁ、何となく分かるよ。

私の先をまた歩き始めた金髪に、

『ねぇ。あんたは、あんただよ。』

声をかけるも、きっと。



届かない。