この人、毎回名前聞くのに毎回覚えられてないんだよね。おいおいって思うよ?

____乱華さん。


相手は乱華さん。ちょっとめんどくさいことになるかなぁ?それでもいいか。


『お久しぶりです、乱華さん。里香です、紫陽 里香。』

泣きそうになるのを堪えて笑う。握手のために差し出してくれた手を握る。


数年前よりも手が少しカサカサしていた。

思い当たる人物がいなかったのだろうか、記憶を手繰り寄せるようにブツブツと私の名前を呟いた乱華さんはハッと私を見上げた。


「里|《さと》ちゃん!?」


懐かしい。そうだ、乱華さんからは里と呼ばれていた。だって、男ばかりの暴走族のKの副総長が里香なんて名前だったら女だって1発でバレてしまうではないか。

本当に懐かしい。


『はい、里です。』


【あの人】が、Kのみんなが脳内にチラついた。
気がつけば先程まで受付の方にいたというのにこちら側へと来て抱きついてくる。

私と変わらないか、少し低いくらいの身長。柔軟剤のフローラルな香りがとてもいい匂いだ。

筋肉質で傷だらけの体じゃなくて柔らかい女の人らしい体。