『…もういいよ。助けてくれないなら、…殺してくれないなら帰って』




アレンはそう言うと力の抜けたクウェンナの腕から脱出し、リビングを抜け二階に行こうとした。




小さな子供が発した言葉に精霊は目を丸くして驚く。





『待ちなさい』




潔く地獄を脱出したアレンだったが、急に低く命令した女性───ダーチェスの魔法によってリビングの扉の場所に固まった。



無理やり向きを変えられ、また残酷な光景を見せられる。





『…………………。』





目を瞑ろうとしたが、それも許されなかった。






『私を見たんだもの。きちんと忘れてもらわなきゃ』



女性がそう言いながらクウェンナに目配せすると、待ってましたと言わんばかりに親しかった彼がアレンににじり寄る。






『証を壊した仕返しだぜ?アレン。』





その言葉にアレンは一瞬、悲しそうに眉を下げた。








『…クウェン兄』




目の前に仁王立ちする兄貴分の愛称を呼ぶ。










クウェンナはフッと目を細めた。







そして、ついこの間まで実の弟のように可愛がっていたアレンに手を伸ばす。