辛うじて聞こえたアレンの言葉に、レイはその胸のなかで顔を上げた。

どうして無理なの?と聞こうとして、やめる。



アレンは顔面蒼白になり、汗を額に滲ませていた。

焦点の定まらない瞳でぼんやりとレイを見下ろしている。




「えっ、アレン…」


レイが驚いて声をかけるとアレンは目を閉じて、


「…ごめ、もう…キツい……」


そう呟きながら体を後ろに倒し出した。



「アレン!?」


レイが慌てて腕を引くその前に、アレンの倒れるところにソファーが現れる。


アレンは見事そこに背中から倒れ込んだ。


ビックリしたレイが顔を上げると、メディンが杖を掲げていた。


彼が魔法でソファーを移動させたのだ。




「魔力を使ったからじゃな」


メディンは少し低い声で囁いた。


リディンが移動したソファーの傍らに膝をつき、アレンに毛布を掛けてやる。



「…移動魔法二回に、位置断定魔法。他にも色々と…。全く、無理をしすぎじゃ」


魔力透視をしたメディンが嘆息しながら呟いた。


レイはメディンの言葉を聞くと、アレンを見て涙ぐむ。