振り向いてよ

「起きないと遅刻するよ、澄香。」

俺はこの可愛い寝顔を無防備に晒している、幼馴染、

鈴原澄香の事が好きだ。

澄香とは家が隣同士で保育園から高校までずっと一緒だ。

俺が澄香の事を好きになったのは小学生になった時。

一緒に帰っていた時、泣いている迷子の子どもがいた。

周りに人は沢山いて、泣いている子どもを見ているのに誰も助けようとしない。

もちろん俺も人見知りだし、自分より小さい子どもが苦手だ。

澄香に、「帰ろう。」と話しかけた瞬間、

「どうしたの?」

澄香は周りの目も気にせず、その迷子の子どもに駆け寄って行った。

その日は澄香のお父さんが出張から戻ってくる日で本当は早く帰りたかったはずなのに

自分の事よりも目の前の困っている人を優先させた。

結局、その子どものお母さんは無事に見つかった。

だけど見つかったのも暗くなってからだった。

俺も心配だったからずっと一緒についていた。

その子どものお母さんが見つかって

よし帰ろうとした時に、

澄香は泣きながら、

「本当に見つかった良かった。」って。

きっと普通の人は、喜ぶが泣きはしないだろう。

その時に俺は思った。

こいつは自分よりも目の前の困っている人に目を向ける。

そして他人の幸せを、喜びを涙を流すほど喜ぶ。

そんなところに俺は惹かれていったのだと思う。

そしてその想いは高校生になった今でもずっと続いている。

なんで俺が澄香の部屋にいるかと言うと、

澄香は朝が弱く、スマホのアラームでは起きないのだ。

だから俺が代わりに起こしている。

ちなみにこれは中学生のころから続いている(笑)

普通の女子は男子が部屋に入るのを嫌がるのに、こいつは、「ゆうちゃんだから大丈夫」って、人の気も知らないで屈託のない笑顔で言われた。

いいんだか、悪いんだか。

俺にとってはもっと意識してほしい所なんだけどね。

そしてかれこれ30分くらい起こしているのに全然起きない。

そして一刻も早く起きないと本格的に遅刻するレベルにまで時間が迫っている。

「澄香、本当に遅刻するよ。」

全然起きない。

そんな時には耳元でこう囁くと・・・・

「澄香、俺先に一人で学校に行くからね。」

がばっっ

ほら、起きた。

最初からそう言って起こせばいいんだけど、寝顔が可愛いからね。粘るんだけど。
けど、本格的にやばくなってきたら、さっきみたいに、

「一人で行くからね。」

と言うと起きる。それは澄香が一人で学校に行くのが好きじゃないからだとか。

よくわからない理由だけど、俺と一緒に登校したいらしい。

まあ、片想いの相手にそんなこと言われたら、嬉しくないわけないよね。

「んーーー、一人で学校に行っちゃダメ―。」

寝起きでも可愛いって、やばいな。ほんと、抑えるのが精一杯だよ。

「じゃ、起きて。早くしないと遅刻するよ。」

「えっ!?もうそんな時間?ゆうちゃん何時からいたの?」

「かれこれ30分は居たよ。」

「ほ、ほんとにごめんね。もう、どうしてこんなに朝起きられないんだろう。そしたらゆうちゃんに迷惑かけないで済むのに・・・・」

うん。そんな可愛い顔して言わないで。襲っちゃいそうだから。その衝動を抑えながら、

「中学の時からだから慣れてるよ。それよりも早く準備。」

そんなこんなで一日が始まっていく。