あれから全てが丸く収まったようだった。
龍泉寺先輩と沼口先輩は無事に付き合い始めたようだし、野球部の交際禁止は『両立出来ない者は交際禁止』となった。

沼口先輩に瑠璃垣が好きだったんじゃないのか聞いたら全然好きじゃないと言われてしまった。
でも恋人がいるか聞いてきたのはなんだったのかと問い詰めると
『ほら、うちの部交際禁止だったでしょ?だから確認しておかないとと思って…』と答えた。
紛らわしいし、だとしたらオレにも聞いてくれよ!
天然で失礼だな!

そんなオレたちの野球部入部は今回の騒動でうやむやになっており、結局入らないで済みそうだった。


そして、念願の橋本さんと西野が付き合い始めたと噂で聞いた。
あの西野がどうやって素直になったのかめちゃくちゃ興味深いがきっと本人は教えてくれないだろうな。

ようやくオレの周りがみーんな幸せになった。

『そろそろオレの番だろ!』
『ゆうちゃん、悲しいお知らせがあるんだ』
『なんだよ』
『ゆうちゃんは10個の初恋の種を実らせたんだよ』
『すげーじゃん!』
『ゆうちゃんが入れてくれた5円玉も10枚なんだ』
『……え、それって…つまり……?』
『これでおしまいってこと』
『………はぁ!?』
『初恋の種を集めるのはもうボクには出来ないんだよ』
『お、おいふざけんなよ!』
『ごめんね、ゆうちゃんの初恋を実らせることができなくて……』
『なんでだよ!なんのためにこれまで……』
『……そうだよねぇ……分かった!』
『な、なにかいい手があるのか!?』
『責任を取るよ』
『は?』
『ボクがゆうちゃんの運命の初恋の相手になってあげるよ!』
『……な…』
『うんうん、もっと早く思い付くべきだった!』
『はぁぁぁっ!?』
『ん?どうしたの?』
『ざっけんな!なんでオレとお前が運命の相手になるんだよ!』
『えー、嬉しいクセにぃ』
『嬉しくないわいっ!』
『ふーん、じゃあボクと恋人にならなくていいの?』
『いいに決まってるだろ!』
『ゆうちゃんの運命の初恋の種、実らなくてもいいの?』
『良くない!』
『ほら!だからボクが実らせてあげるって言ってるんだよ!』
『瑠璃垣以外でお願いします』
『えー』
『ったく、何が悲しくて男同士で結ばれなきゃなんねーんだよ』
『そっかー、じゃあ仕方ないねぇ。初恋って叶いにくいものなんだよ』
『身をもって知ってるよ』
『ゆうちゃんの初恋は叶うといいねぇ』
『おー、切実にな』
『じゃあね、ゆうちゃん、そろそろ行くわー!今まで楽しかったし、名前をもらえて嬉しかったよぉ。ありがとう』
『なんだよ、改まって……ってあれ?』

さっきまで真横にいたはずの瑠璃垣がいなくなっていた。
突然姿を消して驚いたがまたその内現れるだろうとその時は呑気に考えていた。