『ご、ごめんなさい』

伊藤さんはオレの手を取り一緒に帰ろうとアピールしてくる。

『あ、あの…気持ちは嬉しいんだけど…その、ごめんなさい』

可愛い笑顔が……

『えええええええええええ!』

伊藤さんはずっと黙っていたオレの突然の大声にビクッと後ずさる。

『あ、ほ、ほんとに、ご、ごめんなさい』
『あー!いや!こちらこそごめんなさい!』
『……』
『え?どういうことだ?』
『え?』
『あ!ごめん!こっちの話』

混乱のあまり妄想と現実との区別がつかなくなっていた。
冷静に処理していくとどうやらオレはフラれているようだ。

『え、あ、あのさ、理由とか聞いても…いい?』
『あ、うん、その、あんまり喋ったことないし…』
『喋ってたらいいの!?』
『あ、いやそういうわけじゃないんだけど…』
『だったらどうして!?』

納得のいかないオレは食い下がる。
当然だろ?こっちは知ってるんだ!
君がオレを好きだと!

伊藤さんは戸惑ったが観念したような表情を浮かべると一生懸命答えた。

『す、好きな人がいるの…』
『うん!知ってる』
『えっ!?ウソ、どうして…』
『あー、それは…』
『ああああの!六条くんには言わないで!』
『もちろん、当たり前…ん?』
『そそそそその、そういうことだから、私もう行くね』
『え』
『じゃ、じゃあ!ほんとにごめんなさいっ』

伊藤さんはバタバタと教室を出ていってしまった。
いくら鈍いオレでも今の出来事の意味が簡単に理解できた。
伊藤さんはオレに伊藤さんが惚れてると吹き込んだオレの連れ、六条大輔が好きなんだ。

オレ アイツ コロス


『うっおー!ゆうちゃんドンマイ』
『うわー!』

後ろから肩を叩かれ盛大にビビる。
まさかの告白を見られているとは。

『いやぁ、彼女がよく見てたのはゆうちゃんの隣だったんだねぇ』
『うるせーな!』

人の傷をゴリゴリに抉ってくる。

『まあまあ、女なんて腐るほどいるんだから次があるって!元気出せって!んじゃ行くわー』
『おー』

…………………

いや、誰だよ!!!!