『どうして?』

瑠璃垣がポツリと呟いた。

『どうして交際すると野球出来ないの?』
『だから部活動に身が入らなくなるだろう』
『そうかな?』
『そうだ』
『じゃあスポーツ選手が恋人がいたり結婚してたりするのは?』
『……そ、れは…プロと一緒にするな』
『一緒だよ、同じ人間なんだから』
『……!』
『確かに交際すると練習に身が入らなくなる人もいるだろうね。でもさ、人それぞれだよ。大切な恋人の応援がパワーになってもっと頑張れるかもしれない。練習で疲れてヘトヘトでも恋人に会えば元気になって明日からもっともっと頑張れるかもしれない』
『………』
『いいことばかりじゃないかもしれないけど、悪いことばかりでもないと思うよ』
『………』
『野球に身が入らなくなるのは、もしかして龍泉寺くんのことなのかなぁ?』
『……!』
『え!』
『龍泉寺くん、好きな子いるんでしょ?千葉愛梨ちゃんに言ってるの聞いちゃったんだよねぇ』
『そ、それは…!』
『好きな子のこと考えると練習に身が入らなくなっちゃうのかなぁ?』
『………』
『あ、それとも!龍泉寺くんは今は恋人作るつもりはないけど、好きな子……ぬまぐっちーに恋人が出来ちゃうかもしれない。それを阻止するために交際禁止にしてるのかなぁ?』
『……!』
『え、それって…!』

がちゃ
部室のドアが開き、全員の視線が入り口に向けられる。
沼口先輩が立っていた。

『あ、あの、今の話…本当ですか?』
『い、いや…違う!』
『そ、そうですよね…まさかキャプテンが私のことなんか……』
『違うんならもう交際禁止を解除してもいーんじゃないのかなぁ?』
『そ、それは……』
『出来ないってことはやっぱりぬまぐっちーのことが好きなんでしょ?ぬまぐっちーが他の人と付き合うのが嫌なんでしょ?』
『………』
『………!』

龍泉寺先輩は怖い顔をさらに怖くさせ眉間に深くシワが刻まれている。

『まぁ、でも龍泉寺くんの言ってることもよーくわかるよ。両立出来ないなら交際するなってことでしょ?だったら野球を全面的にバックアップしてくれる理解ある恋人以外とは交際禁止ってのはどう?』
『それってつまり…!龍泉寺先輩と沼口先輩が付き合ってもいいってことだな!』
『……!』
『キャプテン!私、キャプテンのことが好きです!交際禁止だったから諦めてたけど、私精一杯サポートしますから!』
『………!』

龍泉寺先輩は困ったような表情になったものの、耳が赤くなっていた。