まさかだった。
その日から沼口先輩の瑠璃垣への猛烈アタックが続いていた。

『ねえねえ!今日こそは二人とも野球部に入ってよ!』
『えー、ゆうちゃんが入らないならボクは入らないよ』
『あー、そっすね…オレ一応日本史研究部に所属してて兼部はちょっと…』
『そんな!日本史研究部なんてほとんど活動してないし、ちゃんと両立出来ると思うよ!』

毎日熱心に誘ってくれる沼口先輩に困りつつ、可愛い女の子に付きまとわれるのも悪くないななんて邪なことを考えていたり。

『そっか……気が変わったらいつでも来てくれていいからね!』
『はぁ…』
『あ、その、逢坂くんちょっといいかな?』
『え、はい』

沼口先輩に人気のないところに連れていかれる。
てっきり沼口先輩は瑠璃垣のことが好きなのかと思っていたが、それは勘違いで…まさか……!

『あ、あのさ』
『は、はい!』
『……瑠璃垣くんって彼女とかいるのかな!?』
『はい?』
『あ、いや、その、部活動に興味がないのは恋人とかのせいかな~って思って…!』
『あー……』
『こ、恋人とかいるとやっぱり部活動に打ち込めなく…なるじゃない…?』
『そっすね…いないんじゃないっすか』
『え!ほんとに!?』
『そういう話は聞いたことないっすね』
『そ、そっか…!あ、ありがとね!じゃ、じゃあまた!』

バタバタと慌てて去っていく沼口先輩。
またか。
またオレではないのか。