『ま、まあ、今日のところは解散にしませんか…?西野くんもゆっくり考えてみたらどうかな?ね!』

蛇沢さんがこの空気に耐えかねたようで久しぶりに声を発した。

『薫ちゃんは困るとすぐ解散したがるよね~、そこも可愛いんだけど~』
『ま、麻美ちゃん…!』
『そういうわけだから、今日はみんな帰って~!薫ちゃんを困らせないでよ~』

西野はフラフラと厨房に入っていく。
橋本さんも後ろ髪を引かれながらカフェを後にした。

『じ、じゃあ、オレらも行くか…!』
『またね~!ゆう子ちゃん、瑠璃ちゃん!』
『またねー!』

堀越さんがヒラヒラと手を振ってくれ、蛇沢さんが入口の外まで見送ってくれた。
怒濤のようにいろいろありすぎてすっかりヘトヘトだ……

『あ!ちなみになんですけど、蛇沢さんって戸塚くんのこと好きだったんじゃ…?』
『あー、それは…』

蛇沢さんは罰の悪そうな顔をした。

『実は二人で出掛けてみて気がついたんですけど、戸塚くんと居ると女の子と一緒に居るみたいだなって』
『へ…?』
『話も合うし趣味も合うんだけど、いつも告白してくれる女の子たちと一緒っていうか』
『私、こんな感じだから女の子扱いされなくて…でも白馬の王子様とかに憧れたりして。その…なんていうか戸塚くんと初めて会ったときのシチュエーションに恋してたのかなぁって…』
『な、なるほど…』
『そう思ったら急に魔法が解けちゃったみたいに戸塚くんのことなんとも思ってなかったんですよね』
『そっか。じゃあどうして麻美ちゃんのこと?』
『あ…それはですね…』

蛇沢さんはいつも通り赤面しながらもじもじし始める。
堀越さんが可愛い可愛いというのと段々と気持ちがわかる気がする。

戸塚くんとの一件のあと二人で改めて出掛けることになったのだとか。
それから何度か二人で遊びに行くようになったらしいのだが、堀越さんはいつも蛇沢さんをエスコートしてくれたそうだ。

『その…麻美ちゃんは意外とたくましくて、男らしいところがあって…私のこと常にお姫様みたいに扱ってくれるんです…』
『ほ、ほう…』
『えー!素敵じゃーん!』
『そうなんです!そしたらもう一緒に居るとときめきっぱなしで…!』
『それで好きになっちゃったんですね』
『はい!こんな気持ち初めてで…』
『良かったねぇ!蛇っち!』

蛇沢さんは頬を赤らめながら満面の笑みを浮かべていた。