そこからの行動は早かった。
こういうことに疎すぎていつまでも小2扱いを受けていたオレもついに大人な一面をみせる時がやってきたのだ。

B組の友達に頼んで伊藤さんに教室で待ってて貰うことに成功したオレは人の気配が無くなったのを見計らってB組に向かった。

教室を覗くと伊藤さんが自分の座席と思われる机に向かってノートを書いていた。
勉強してんのか?
ま、真面目だ。

自分とはあまりに違うタイプすぎて多少ひよった感はあるが、それを誤魔化すかのように勢いよくドアを開けた。
音にビックリしたのか伊藤さんはバッと顔を上げた。

『あ、ごめん』
『あ、ううん、大丈夫』

慌てて謝ったが伊藤さんも慌てて答えてくれた。
何から話せばいいのか分からなくて口ごもる。
伊藤さんも内気な性格のためか口をつぐんでいた。
沈黙に焦る。

『あ、あああのさ!』
『あ、うん、そっか、話があるんだっけ?』
『あ、ああそう!そうなんだよ!』
『うん?』

伊藤さんが控えめに話を促してくる。
いかん、ここはかっこよく決めなくては!
意を決して一気に伊藤さんとの距離を詰めた。

『伊藤さんのこと好きなんだ!付き合って下さい!』

決まった!
オレ史上、最強にかっこいい!
伊藤さんも嬉しそうな笑顔でコクりと頷いた。