この間の蛇沢さんと戸塚くんのデートを見届けたわけなのだが、シュッとしたイケメン二人が女の子らしい趣味を満喫しているようにしかみえなかった。
意外にも乙女趣味な二人は結構お似合いなのかもしれない。

『その後、あの二人はどうなってるかなぁ?』
『あの二人って?』
『蛇沢さんと戸塚くんだよ』
『あーねぇ』
『進展してたりして!』
『それはどうだろうねぇ』

瑠璃垣と校庭を歩いていた。
最近の瑠璃垣は学校への溶け込みかたがハンパなく登下校を共にするまでになっていたのだ。

『おやぁ?』
『おぶ!急に立ち止まんなよ!』
『あれを見てごらん』
『ん?』

瑠璃垣は野球部の部室を指差していた。
部室の影に人がいるような…
一人は龍泉寺先輩ともう一人は……

『え、千葉さん?!』
『こっそり覗いちゃお☆』
『お、おい、待てって!』

部室の裏手に回り込み、二人からは気づかれにくいポジションを確保した。
ギリギリのところまで近づくと声が聞こえてくる。

『好きです!愛梨を甲子園に連れていってください!』

まさに山場だ!
なんともダサイ告白に瑠璃垣はヒューヒュー騒ぎだし、慌てて黙らせ息を潜める。
千葉さんは気合いを入れてきたのかいつもよりも派手でギャルっぽさに磨きがかかっていた。
これは本気だ!本気で甲子園について行く気だ!

『あー…すまない』
『えっ…』
『その…気持ちには答えられない』

龍泉寺先輩にしては歯切れの悪い物言いだった。
まあ、告白を断るんだから無理もないか。

『フラれたー!もがっ』
『おい!静かにしろって!』

なんなんだ、この瑠璃垣のはしゃぎっぷりは。

『あの…』
『なんだ』
『どうしてですか…?』
『……』
『どうしてダメなんですか?』

意外にもグイグイ聞くんだな千葉さんよ。
先輩ちょっとびびってんじゃん。

『あ…その……今は付き合うとか考えられないんだ』
『待ちます!付き合う気持ちになるまで!』
『え』
『彼女ほしいなって気持ちになるまで私いつまででも待てますから!』

すげーな。
強いよ千葉さん。
執念を感じる。

『い、いや…その…』
『……なんですか…?』
『…………』
『はっきり言ってください!』

なんか男らしいよ千葉さん。
オレの告白なんてこんな男らしさ全然無かったもんな…

『す、すまない。君と付き合いたいと思うことは一生ないと思う。』
『……それは……私以外に…好きな人がいる…ってこと…?』
『………』
『……ちゃんと言ってもらえないと…納得出来ません!』
『……ああ…甲子園に連れていきたいヤツが…いるんだ』
『…その人の事が……好き……?』
『……ああ……』
『わ…かり…ました…』

千葉さんはフラフラと校門へと歩いていく。
その背中を見つめる龍泉寺先輩は一体どんな気持ちなんだろうか。