瑠璃垣さんに誘われて来てみたものの、急に行けなくなったとメールが入り二人で遊んでくれって。
二人って誰がくるんだろう。

『あ、あの』
『はい?』

振り向くと戸塚くんが後ろに立っていた。
えーーーーー!ふ、二人って戸塚くん!?

『あ、え?ど、どどどうして!?』
『瑠璃垣さんに誘われて…でも来られなくなったみたいですね』
『あ、そそそそうですね』
『どうします?』
『どどどどうしましょ!?』
『ん~、どうしましょ』

物腰の柔らかい穏やかな戸塚くん。
私と二人っきりで嫌じゃないのかな。
どうしよう、せっかくのチャンス頑張らないと。

私は戸塚くんが気になっていた。
初めて会ったのはバイト先に戸塚くんがお客さんとして来て私が接客したときだ。
その日はぼんやりしていたからか何かにつまづいて転んでしまった。
いや、転ばなかった。

たまたまトイレに行こうと立ち上がった戸塚くんがギリギリのところで抱き止めてくれたのだ。
女の子を助け起こすことはあっても自分よりも頭一つ分身長の高い殿方に抱き止められたのは初めてで、とにかく驚いた。
こんな女らしさの欠片もない自分がまるでお姫様扱いを受けたかのような錯覚に陥ってしまったのだ。
それから戸塚くんが気になる存在になった。
この気持ちがなんなのか確かめたくて仲良くなって話してみたかった。

でも、バイト先でも姿を見るとあのときのことを思い出してしまってまともに話すことなど夢のまた夢。

『困りましたね』
『あ、あああの、せっかくなので買い物とかご飯とか行きませんか?』
『そうですね』

や、やったーーーーー!
めちゃくちゃ頑張ったぞ、自分!