週末、休日だというのに学校にきていた。
それもなんの縁もゆかりもない野球部の試合を観に。

瑠璃垣いわく一網打尽作戦なんだとか。
そんなにうまくいくのかね…

まず蛇沢さんと合流したオレたちは伊藤さんと大輔カップルと遭遇した。
さらに堀越さんと西野がやって来た。
二組とも瑠璃垣が呼び出したようだが一体どんな手を使ったんだ?
西野はあからさまに嫌そうだった。

『ゆう子ちゃん、瑠璃ちゃん!今日は楽しみにしてたんだ~』

堀越さんがにこやかに話しかけてくる。
小声でオレたち女装してないけど大丈夫なのか聞くと、
だってゆう子ちゃんと瑠璃ちゃんは心は女の子なんでしょ?だから平気だよ
と答えてくれた。

否定したらもう話してくれないかもしれないと思いグッと飲み込む。
瑠璃垣は堀越さんの周囲をなるべく顔見知りで囲むために伊藤さんを呼んでいたようだ。

幸いにもギャラリーは女子率高めでオレたちの心配は杞憂に終わりそうだった。

『薫さんも来てたんだね~、私服初めて見た~』
『そうだっけ?いつもはカフェでしか会わないからかな』
『うふふ、私服もかわいいね~』
『え、い、いや、そ、そう!?普通だよ』
『え~、かわいいよ~』

真っ赤になる蛇沢さん。
なんかのっけからイチャついていていい雰囲気だった。

西野は特に気にした様子もなく、もしかしたらこれはいつも通りの光景なのかもしれない。

オレの隣では伊藤さんと大輔カップルも終始イチャついており、爆発しないかなって思った。まじで
もはや何で呼んだし。

試合が始まり打順が4番バッターになったとき近くにいる他校のごく一部から黄色い悲鳴が上がった。
声につられてグラウンドを見ると龍泉寺先輩がバッターボックスに入っていた。
どうやらキャプテンで4番バッターらしい。
やっぱりオレの思った通りキャプテンだったか。

龍泉寺先輩は1球をストライクで見送ると2球目のボールっぽい球に思い切りスイングした。
まじか、と思っていたらカキーンとめちゃくちゃいい音が聞こえ、打球は三遊間を抜けた。

『きゃーーーっ!!龍泉寺さまぁーーーっ!』
他校の群れの中で完全にピンでの歓声が響きそちらを見るとカフェにいた三人組の一人、派手な女の子が叫んでいた。
周りに優男とその隣には

『あれ、橋本さん!?』
『あ、結人さん!』
『どうしてここに?』
『友達の付き添いで』

橋本さんはそういうとチラリと優男と派手女子を見た。
紹介してもらう気満々でオレは二人の方を凝視する。
橋本さんはオレの熱視線で察してくれたのか優男の方が戸塚昴、派手な女の子が千葉愛梨だと紹介してくれた。
蛇沢さんをチラ見すると分かりやすく赤面していたので千葉さん確定なのだろう。
あのときに居たカジュアルな女の子は今日は来ていなかったので、千葉さんの方でほんとに良かった。

オレにしか分からない興奮ではあるが言わせてもらおう。
役者が揃ったーーーー!