『なあ、瑠璃垣…』
『なんだいゆう子りん』
『おい』
『冗談だってぇ、で?』
『橋本さんと西野と麻実ちゃん、どうすればいいのかな』
『難しいねぇ』
『橋本さんと西野をくっつけるために西野と麻実ちゃんの絆を引き裂くっていうのも違う気がするし』
『そうだねぇ。実はボクはひとついい解決策を思い付いてるんだけど知りたい?』
『なんだよ!勿体ぶってないで早く言えよ!』
『堀越ちゃんに運命の初恋の種の相手が現れればかーくんは必要なくなって全てまあるく収まるんじゃないかなぁ?』
『!』
『万が一、それがかーくんだとこの作戦はアウトなんだけどね、堀越ちゃんの様子を見てるとかーくんの可能性は限りなく低い気がするぅ』
『どこにいるんだ!麻実ちゃんの相手!』
『それはボクにも分からないけど、堀越ちゃんの身辺を調査してみるよ!』
『おお!期待してるぞ!』

瑠璃垣の調査を待つ間、カフェを張り込むことにした。
西野か麻実ちゃんのどちらかに会えるかもしれないし、なにか新たな発見があるかもしれない。

『いらっしゃ…げ』
『よー、西野ー!』
『来るなって言ったよな』
『いやぁ、ここのカフェ気に入っちゃって』
『帰れ』

ベシッ

『いたっ』
『ちょっと西野くん!なにいってんの!?もう中入ってて』
『チッ』
『今舌打ちした!?』

この間の細身のイケメン店員さんが慌てた様子で西野を厨房に追いやった。

『すみませんでした』
『あ、いえ』
『西野くんの友達なんですか?』
『あ、まあそんなところです』
『へぇー』

店員さんは意外そうな声を出すと席へ案内してくれた。

『西野くんのお友達って堀越さん以外に見たこと無かったからちょっと驚きました』
『へ?』
『西野くん、堀越さん以外にはめちゃくちゃ愛想が悪いからもう大変で』
『あー、でしょうね』

今日はお客さんがほとんどいないためヒマなのか店員さんがフレンドリーに話し相手をしてくれるのがありがたかった。
なんとなく自己紹介することになり名前を教えてもらった。
蛇沢薫さんというらしい。
イケメンなのに笑顔が可愛らしいのがまたモテそうで僅かながら嫉妬心を刺激されつつ、また逆に新たな扉を開いてしまいそうで相反する複雑な気持ちを覚えた。

『麻実ちゃんとはお話しするんですか?』
『ああ、よく来てくれるので今みたいにヒマな日は結構話しますよ』
『へぇ!最初からですか?』
『最初?初対面の時ってことかな?』
『そうです』
『うん、そうですね。そういえば初めて会ったときも結構喋ったかもしれないですね』
『普通に…ですか?』
『はい、普通でしたよ』
『それって何年前ですか?』
『いや、西野くんがバイトに入ってからだから今年の4月とかですよ』
『!』

おかしい。麻実ちゃんが初対面から普通に喋れるなんて。
少し蛇沢さんのこと探ってみた方がいいかもしれない。