『かーくん！あっそびーま…』
『やめろ、息の根を止めるぞ』

ガタガタと音をたてながら西野がものすごい勢いでオレのもとにやってきた。
手で鼻と口を塞がれあやうく本当に息の根を止められるところだった。

『もがっ、ご、ごめんて！』
『次はないぞ』
『は、はい』

怒りすぎだろ。

『用がないなら行くぞ』
『いや！あります！ありますってば！』

あると言っているのに戻ろうとする西野を必死に引き留める。

『ちょっと顔かしてもらえるかしら』
『……断る』
『ヤダ！待って！西野！にっしーってば！』
『勝手にあだ名で呼ぶな』
『冗談ですやん』
『用件を言え』

中々の塩対応ぶりに普通に聞いても答えてはもらえないんだろうなと思いうまい言葉はないか模索する。

『あー、その』
『なんだ早くしろ』
『橋本さんのことなんだけど！』
『……』
『西野と橋本さんは仲良かったんだろ？』
『答える理由がない』
『ちゃんと答えてくれたら付きまとわないから！』

よっぽどオレに声を掛けられるのが迷惑なのかこの言葉に西野は少し固まったあと口を開いた。

『……昔はそうだったかもな』
『やっぱり！じゃあ今は？今はどう思ってるんだ？』
『どうって？特になんとも思ってない』
『……もし…橋本さんが西野のこと好きだって言ったらどうする？』
『……別に、どうもしない』
『付き合ってって言われたら？』
『断る』
『なんでだよ！』
『…好きじゃないからだ』
『……！』
『それに俺には生涯を共にする人がいるからな』
『な…！』
『もういいだろ、二度と俺に話しかけるな』

取りつく島もないとはまさにこういうことを言うんだろうな。