それからオレは大輔のリサーチに撤した。
こんなに大輔のことを考えたのは初めてかもしれない。
色々聞けば聞くほどクソみたいな男だ。
ほんとになんでこんな男がいいんだ、伊藤さんよ。

『なー、そういや最近伊藤さんと仲良いよな』
『は?』
『いや、なんかちょこちょこ一緒に居るとこ見かけるっつーか』

まさか大輔に見られていたとは。
っていうか確かに大輔は大抵オレの側にいるから気がついても不思議じゃない。

『もしかしてお前ら付き合い始めたのかー?このこのぉ』
『それはない』
『そんなキッパリ否定せんでも』
『いや、伊藤さんもオレなんかにはこれっぽっちも興味はない、勘違いするな』
『だからそんな言い方せんでも』

これはマズイな。大輔にオレと伊藤さんが恋仲だと思われて良いことなんて何一つない。
対策を練らねば。


『あ、あの、結人くん呼んでもらえませんか…』
『おーい、結人呼んでるよー!』

クラスメイトが声をかけてくる。
ドアに目を向けると見覚えのない女の子が立っていた。

『って、え!?伊藤さん!?』
『は?まじ?』

大輔もオレにつられて入り口を見ていた。
長かった黒髪をバッサリと肩まで切ってほんのりと茶色になった毛先にゆるっとパーマがかかっているようだった。
オレのアドバイスを全面的に受け入れたようでいつもよりスカートが短く、首回りも開放的なっており、さらには新しい袖の長めのカーディガンを着ていた。
まさに今時のイケてる女子高生そのものだった。
クラスの男子が少し色めき立つほどに。

オレは伊藤さんのもとに向かった。

『すごいね!めっちゃ可愛くなったじゃん』
『そ、そうかな…』

思わずストレートに本音を言ってしまった。
外見はめちゃくちゃ変わったが、内面はいつも通りの伊藤さんで少し安心する。

『あ、そうだ、コレ』
『え?』

オレは伊藤さんに自分の携帯の連絡先を渡した。

『とにかくこっちに連絡してもらえるかな?』
『あ、うん』
『じゃあもう戻らないとまずそうだから』
『へ?』
『事情はあとで!』
『わ、分かった』

伊藤さんはパタパタとB組に走っていく。
オレは席に戻ると大輔が早速食い付いてきた。

『伊藤さん、スゴい変わったな』
『ああ』
『で?』
『ん?』
『なんの用だったわけ?』
『あー、なんか相談に乗ってて』
『相談って?』
『それは…オレが言っていいことじゃねーよ』
『なんだよそれ』
『んー、本人に直接聞いてみれば?大輔にも話してくれるかもよ』
『ふーん』

これは少なからず見た目作戦が効いているんじゃないだろうか。
大輔が伊藤さんに興味を持ち始めている。