『かーくん!忘れ物しちゃった』
『やめろ』
『あはは、わりぃわりぃ』

カフェに戻るとさっきまでいなかった女の子と西野が話していたが、オレの登場に慌てて近寄ってきた。
無愛想な西野にしてはなんとなく親密そうに見えたのが妙に印象に残った。
ふわふわとした髪の毛で雰囲気もほわほわとした女の子だった。

ぼーっと待ってると西野がオレのパスケースを持ってきてくれた。

『ありがとな』
『ああ、もう来るなよ』
『んだよ、つれないなぁ』
『伊藤さんとは…』
『あ、じゃあまた学校でな!』
『ったく』

慌ててカフェを飛び出す。
アブナイアブナイ。
せっかく伊藤さんが言いふらさないでくれているおかげでオレの平穏が守られているというのに。

『いやぁ、これまたややこしいことになってきたなぁ』
『うわ!』

毎度の事ながら驚いてしまう。

『すごいね、ゆうちゃん!ボクが調べる前に自分で橋本さんのこと突き止めちゃうんだもん!それにしても橋本ちゃんはかーくんのこと好きっぽいし、かーくんはなにやらあのふわふわちゃんと怪しい雰囲気だし』
『そうなんだよ!』
『ゆうちゃんの周りで綺麗な一方通行が出来てんなぁ』
『どうなってんだよ、全く』
『これはあのふわふわちゃんを調べてみた方が良さそうだな、じゃあ行くわー』

ガシッ

『おっと』
『行かせるか』
『なぁにゆうちゃんったら、甘えんぼさんなのかなぁ?』
『殺すぞ』
『いやん』
『お前なにもんだよ』
『ん?』
『なんで知ってんだ』
『なんでって』
『カフェの中にはいなかっただろ』
『あれぇ?そうだった?』
『そもそも最初に会ったときB組にはオレと伊藤さんしかいなかった』
『ほほう』
『入口を見てたオレの背後から人が出てこれる訳がないんだよ』
『なんだって!』
『それにな、あれからオレはB組でお前を探したがいないんだよ』
『なにがぁ?』
『お前はB組の生徒じゃない』
『おお』
『ふざけてないで答えろよ、なんの目的でオレの周りをうろついてんだ』
『離してよ、ゆうちゃん』
『イヤだ』
『逃げないから、ちゃんと説明するよ』