『あ、あの…すみません、橋本詩織さん呼んでもらえませんか?』
『え…』
『あ、いや、怪しいものではないんです!』

完全に不審者を見る目だった。
どうにか信用してもらわないとと焦るがノープランで来てしまったためうまい言葉が見つからない。

『どうしたの?』

黒髪の女の子が近寄ってきた。

『あ!』
『詩織!来ちゃダメ!』
『へ?』
『あ、あの!コレ!』

不幸中の幸いというべきか、橋本さんその人がたまたま通りがかったのだ。
慌てて握りしめていた生徒手帳を差し出す。

『あ!私の!』
『え?ウソ、知り合い?』
『あ、ううん、そんなことないんだけど』
『まさかストーカー!?』
『え』

橋本さんまでも不審者を見る目を向けてくる。

『いやいや!違うんです!こないだ本屋でぶつかって拾って追いかけたけどもういなくて』
『……あー!』

少し間があったが思い出してくれたようだった。

『そ、そのまま持って帰っちゃって、困ってるんじゃないかなって持ってきたんです。ごめんなさい』

疑いの眼差しをたくさん受けて居心地が悪かったので慌てて捲し立てる。

『ごめんなさい!わざわざ持ってきてくれたんですね!探してたんです。助かりました。ありがとうございます!』

橋本さんは綺麗な笑顔を向けてきた。
良かった。ホッと一息ついた。

『そ、それじゃあオレ行きますね』
『あ、待って!何かお礼を…』
『いやいや!全然!大丈夫っす!お気になさらず!それじゃあ』
『あ、あの…!』

橋本さんを振り切り手を降って去るオレ。
うわーこれ、完全にかっこいいやつじゃん。
惚れられちゃったらどうしよー、なんつって。