背中に触れる柔らかいソレは、耳元に、呼吸する息が触れそうなほど、顔を近づけていることを、俺は背中で感じていた。
呼吸が荒くなる。
力を一瞬でも抜けば、口の中の塩水が溢れ出てしまいそうだった。
『ねぇ』
足が震える。
腰に力が入らず、普段何気ない「立つ」と言う行為の仕方を忘れたように、不自然な力を、俺は体全体に入れていた。
耳元に、ダイレクトに伝わる、声。
『…死ンジャエ』
「―――――ッ!!!」
コップを持っていないほうの手をめちゃくちゃに振り回し、俺はバタバタと駆け出すとサチを見つけるべく部屋を探し回った。
溢れ出そうになる水を手で口元を押さえることで耐え、昭彦の部屋を訪れた俺は、テーブルにコップを置いてその散らかった部屋の荷物を掘り返したり投げたりして、縫いぐるみを探した。
暗い部屋の中では手の平サイズの縫いぐるみを探すことすら困難だ。

