ハッと顔を上げて、音の先を耳で手繰る。
何処からか音が聞こえた。
昭彦が動き出したのだろうか、そう思いながら、ドアにゆっくりと耳を近づけて一枚隔てた廊下の状況を聞き漏らすまいと軽く息を止めた。
…、………、……
形容する音すら、思いつかないほど微かな物音。
小さな小さなその音はどこかから聞こえ、近づいていくのか遠のいていくのかさえわからない。
ただ、何かが居る。
それだけが、わかった。
昭彦なら縫いぐるみを見つけて「勝ち」と聞こえてくるはずだ。
俺は暫くの間神経を研ぎ澄ませたまま、ドア一枚隔てた変わらぬ暗闇が充満する廊下を耳だけで観察した。

