「おい、どうしたんだよ稔…」
「今、なんか…ドアの隙間で、目が合った」
いつもなら、「何言ってんだよ」と昭彦は指差して笑っておどけて見せていただろう。
しかし、今の俺の顔色を見た昭彦は少なからずそんなおちゃらけることはなく、言われた、もう何もいない、大きく開け放たれたドアを振り返る。
「…ビビってるから、ちょっと変なもん見えたんだって」
そう言い聞かせるように昭彦はそういうと、洗面器を持ち上げると風呂場へまた向かおうとドアへと向かった。
「なぁ、マジで止めようぜこれ!」
俺は立ち上がって昭彦の腕を掴んだ。
薄暗い廊下、階段手前で俺たちは立ち止まって、顔を見合わせる。
まだ始めていないのなら、終わらせることが出来るかもしれない。そう思ったのだ。
しかし、昭彦は頑なに首を横に振って、やると宣言したのだ。酷く青い顔をして。
「何でだよ、絶対ヤバイって!」
「途中で投げ出せねぇんだよ!!」
それまで静かだった昭彦が叫んだ。
泣きそうな声で、ガタガタと震えながら、今にも洗面器を落としてしまいそうになりながら。
「…縫いぐるみ、縫いつけた瞬間に、言ったんだよ…アイツ“ モウスグダネ ”って…」
ゾッと、背筋に悪寒が走った。

