ピピピピ…


低血圧で寝起きが悪い私には
憎くてしょうがない、
7時に決まって鳴るアラームの機械音。


少し手を伸ばして寝ぼけまなこで
ボタンをカチッと押す。


はぁ…今日も朝か。


と、瞑想に耽っていたら、
今日が高校の入学式だということを
思い出した。


初めて袖を通す真っ白の
皺ひとつ無いブラウス。

少し膝上の紺色スカート。

それとお揃いの色のソックスに、
可愛いと噂の赤いリボンを付けたら、
急いでリビングに入って、
朝ごはんを口にかきこむ。


「あらぁ、麻白、ハムスターみたいよ?」

なんて笑っているお母さんは放っておいて、
胸元にはエンブレムが縫われている、
明るい紺色のブレザーを羽織り、
慌ただしく家を出た。


「あれ、麻白ちゃんじゃない、
おはよう、息子ならもう家を出たわよ?」


そりゃそうでしょと頭の中では思う。
だって、今は遅刻気味。
私の足の速さを見せるしかないんだから。


「わかりました!」


とだけ返事して、
50メートル走8.0秒の意地を見せるように
足音を立てて走った。