桜先輩をやっと見つけた次の日。
いつも通り登校すると、何か凄い視線を感じる。
視線の方向を見たが、誰もいない。
…気のせい、か。
ぱっと前を向くと視界にピンク色のカーディガンが見えた。
…桜先輩だ。
これは、挨拶をしてもいいのだろうか。
ものすごく話しかけたい…
よし、うじってねぇでいくぞ!
「さっさく…」
と、言いかけたところでまたもや視線。
あぁ、先輩に声をかけるタイミングを失ってしまった。
ムカつきながら視線の感じた方を見れば、そこに居たのは物凄い形相で俺を睨んでいる、赤いサンダルの男。
うちの学校のサンダルは、学年ごとに色の指定がある。
俺達1年は青で、2年は赤、3年は緑だ。
つまり、俺を睨んでいる男は2年。
…誰?
全く知らない男。
恨まれるようなことをした覚えもない。
「なんすか。」
思いっきってい聞いてみると、男は走り去って行ってしまった。
「なんだあいつ…」
あいつのせいで先輩に挨拶出来なかったじゃねぇか。
男が去った方向をぼーっと見ていたら、後ろから塁が突進してきた。
「おはー!! どうしたんだよ、ぼーっとして。」
「はよ、塁。 なんか知らねー2年の男に睨まれた。」
教室へ向かいながらさっきの出来事を説明する。
「2年の男? お前なんか恨まれるようなことしたんじゃねーの?」
「いや、全く覚えねーよ。」
「お前の事だから女絡みじゃね?」
ああ、女ね。
それならありうる。
昨日フッた女とか、ね。
「めんどいな。 俺のせいじゃねーのに。」
「モテる男は罪ですなぁー!」
「うっせぇよ。 モテんのも結構大変なんだぞ。」
女同士の揉め事やら逆恨み、さらに男の嫉妬とかも。
めんどいことが色々あんだよ。
「うわー、ムカつくわぁ…」
そう言って塁は容赦なく俺に腹パンした。
「いってぇよ!!」 と、叫ぼうとして止めた。
だって、またあの視線を感じたから。
後ろを振り向き、視線の方を見れば、やっぱりあの男。
「おい塁、アイツ。」
「うわ、めっちゃ睨んでんじゃん。」
塁に声をかけて2人で睨み返す。
男は怯えた顔をして逃げていった。
「塁、頼みがあんだけど。」
「了解。学食、デザートも奢れよ。」
「ああ、頼む。」
塁と言葉少なに会話をし、その場で別れた。