今度、加代子ちゃんからも〝ファン一号くん〟について話を聞こう。なんて、そんなことを考えていると。


「ヒロさん」


少しだけかしこまった感じで、明希ちゃんが私の名前を呼んだ。


「なに?」


顔を上げて隣を仰ぎ見れば、明希ちゃんは前を向いたままで。


「寒くない?」


「? 寒くはない」


どうして突然、と不思議に思いながら答えると、明希ちゃんが表情を砕き、眉尻を下げてひとり苦笑した。


「そっかー。だよな、今のは俺、せこかったよな」


「え?」


言ってることがよく分からずに首を傾げると、不意に明希ちゃんが私を見下ろした。

まっすぐに見つめてくるその瞳には、熱がこもっていて。


「よかったら、手、繋ぎませんか。
あそこの曲がり角まで」


そんなこと、を。

くっと変なふうに胸が引き締められる。


「……うん」


手をそっと差し出せば、きゅっと包むように握り返された。