さらに深くうつむき、私は固くした声を張り上げた。


「私、ずっと明希ちゃんに最低なことをしてた」


もしかしたら、出会わない方がよかったのかもしれない。


「もう関わらないようにするから。
ごめんなさいっ……」


そう言うと、私は明希ちゃんの手を振り払い、目も見ないまま美術準備室を駆け出た。

「ヒロっ……」

私の名を呼ぶ明希ちゃんの声に耳もくれないで。


もうどうしたらいいかわからなかった。


なにも考えないようにひたすら足を前へ前へ動かし走っても、様々な感情が胸に沸き起こってしまう。


私はずっと明希ちゃんを欺いていた。

偽彼になると言ってくれた明希ちゃんを利用していた。


大への想いが実るはずなんて、最初からなかったんだ。


中2のあの日──『お前の歌は聴きたくない』と言い放った大が、私が見た最後の姿だったのだから。