まわりの音が耳に届かず、世界に取り残されたようなそんな恐怖が襲う。


呼吸ばかりが急いて、息が切れる。


やだ、やだ──。


「え、やば」


「どうしたんだろうね、なんかトラブル?」


聴衆のそんな声が耳に届き、いつの間にか音楽が止まっていた現実の世界に、意識が引き戻される。


「すみません!」


口々に謝る軽音部の人たちの声が、背後から聞こえてくる。


「……高垣ちゃん」


マイクに掴まって今にも倒れそうな体を支えていると、そんな声と共に肩に手が置かれた。


「今日はもう終わりにしよう」


下瞼に力のこもった硬い表情の鞘橋さんから告げられたのは、中止でも延期でもなかった。終了、だった。


目の前の景色が歪んで、まっすぐ立てているかすらもわからない。


「ごめん、なさい」


ゼェゼェと荒い息の狭間で辛うじて出たその声は、情けないほどに震え掠れていた。


大の姿はもうそこにはなかった。