五十夜美咲事件帳 No.000【男スポ作品】

「もう、遅いわ……」

「とんでもない! まだ、これからです。罪をきちんと償ったそのとき、よかったら私にあなたの最高の料理を食べさせて下さい……ね?」

「ふふ……あなた、よくイイ人っていわれるでしょ?」

「はは……いつかそれがほめ言葉になればいいんですけどねぇ」

「私が出所するまで独り身でいたら、考えてあげてもいいわよ?」

「お願いします」



 こうして今回の事件は幕を閉じることとなりました。

 長内さんと日比谷さんはなんと、これを機に二人でお店を出すそうです。

 なんとのなんとで、実はお二人、裏で交際していたのだそうです。

 いやはや日比谷さんのあの演技に脱帽しますがそれよりもあの“ぼくとつ”そうな長内さんが……人は本当に見かけによりませんね。

 そうそう、あのとき気になっていたことなのですが、どうして五十夜警部補が伊地山くんをぞんざいに扱っていたかについて。

 どうやら警部補は最初から彼は犯人ではないと確信していたからだそうです。

 その理由を訊ねると……

「第一発見者が犯人のパターンも当然ありますが、もし彼が犯人であれば、せっかく偽装工作をしようとしたにも関わらず、それがバレた瞬間に真っ先に疑われそうな第一発見者になるシフトのときに犯行に及ぶとは考えられませんからね」

 それから警部補は今回の事件をこのように振り返りました。

「女性は香水をよくつけますが……香水には2つの意味があります。

 1つは自らのにおいを覆い隠すため。

 もう1つは自らの存在を引き立たせるため……。

 今回の事件はどちらだったでしょうね?」

 普段の自分が染み付いた場所で証拠を覆い隠そうとした犯行。

 けれどそれはその場から逃れるために、自らを更なる高みへ昇らせるために行った犯行。

 ひとつだけはっきりしているのは、やりきれない想いが起こさせた──



──悲しい女性の事件だったということでしょうね……。