「一時の過ちが、全ての始まりで、終わりだったのよ……」
ぽつり、ぽつりと語られた事実はあまりにも痛切で、ひとこと口にするたびに彼女は血を流しているように感じられました……。
「この店に入ってしばらくしたある日、店が終わってからあの男に厨房に呼び出されたの」
他の店員が帰った後のことだそうです。
メインを一皿作ってみせろといわれた彼女はそれまでの経験をすべてその皿に込めました。
「片桐は絶賛したわ。それまで女であるというだけでまともに評価されなかった私にとって、それはとても大きな喜びだった……でも、その後に犯した過ちが……」
喜びで今までにないくらいこころを開いた彼女はその夜。
「身体を……許してしまったのよ……。それを、あの男は!」
あまりにも、非道な行為──
「まさか……」
「そのまさか、よ。ビデオに……撮られてたの。後日になってそれを片桐は私にみせて「これを世間に流されたくなければ一生自分の手足でいるんだな」って……」
片桐の脅迫に彼女は従うしかなかった。
けれど、他の店からの引き抜きの話があったときに、心の底から懇願したそうです。
いつか必ず戻ってくるから、少しの間だけでも自分の実力を試させて欲しい、と。
「でも、それもあの男を怒り狂わせる火種にしかならなかった。挙げ句、その怒りは私の身体に矛先を直接向けて……」
「もう、そこまでで結構ですよ……」
「私は、私は、ただ……」
地面を力の限り握りしめる越野さん。
その彼女の前に、同じ目線になるように五十夜警部補は屈み込み優しく……けれども強い口調でこういいました。
「あなたが負わされた傷は、計り知れないほどに大きい。けれど、だからといって、それは殺人の免罪符にはなりません」
ゆっくりと、手錠をかける気などまったく見せず彼女の肩を抱き抱えて立ち上がらせる警部補。
「罪は罪であり、裁くことにはならないのですから。あなたのその2つの手は、人を幸せにするために使うべきです。そうでしょう?」
ぽつり、ぽつりと語られた事実はあまりにも痛切で、ひとこと口にするたびに彼女は血を流しているように感じられました……。
「この店に入ってしばらくしたある日、店が終わってからあの男に厨房に呼び出されたの」
他の店員が帰った後のことだそうです。
メインを一皿作ってみせろといわれた彼女はそれまでの経験をすべてその皿に込めました。
「片桐は絶賛したわ。それまで女であるというだけでまともに評価されなかった私にとって、それはとても大きな喜びだった……でも、その後に犯した過ちが……」
喜びで今までにないくらいこころを開いた彼女はその夜。
「身体を……許してしまったのよ……。それを、あの男は!」
あまりにも、非道な行為──
「まさか……」
「そのまさか、よ。ビデオに……撮られてたの。後日になってそれを片桐は私にみせて「これを世間に流されたくなければ一生自分の手足でいるんだな」って……」
片桐の脅迫に彼女は従うしかなかった。
けれど、他の店からの引き抜きの話があったときに、心の底から懇願したそうです。
いつか必ず戻ってくるから、少しの間だけでも自分の実力を試させて欲しい、と。
「でも、それもあの男を怒り狂わせる火種にしかならなかった。挙げ句、その怒りは私の身体に矛先を直接向けて……」
「もう、そこまでで結構ですよ……」
「私は、私は、ただ……」
地面を力の限り握りしめる越野さん。
その彼女の前に、同じ目線になるように五十夜警部補は屈み込み優しく……けれども強い口調でこういいました。
「あなたが負わされた傷は、計り知れないほどに大きい。けれど、だからといって、それは殺人の免罪符にはなりません」
ゆっくりと、手錠をかける気などまったく見せず彼女の肩を抱き抱えて立ち上がらせる警部補。
「罪は罪であり、裁くことにはならないのですから。あなたのその2つの手は、人を幸せにするために使うべきです。そうでしょう?」


