放課後。
下駄箱を前にして、ドキドキしている自分がいた。

落ち着け!私!
「ふぅー」
と深呼吸をしてから、カサッと置いてあった紙を手に取る。
小さな紙を見ると、そこには。

『あの。どちら様ですか?』

と書いてあった。
昨日のまま?
と思って、裏返すと。

『黒川 真弥です』

私の字形とは違った、別の字形でそう書いてあった。その字形は、「好きです」の「です」の部分の字形とよく似ていた。
同じ人が書いたって、ことだよね。
黒川くんか。同級生かな。
さすがに、後輩はないだろう。
でも、同級生で、こんな名前の人。
聞いたことも、見たことも、ない。
見覚えがなくて、誰だろうと考え込んでしまう。
と、ふと見た紙には、別の文章があった。

『名前、教えてください』

名前?
私の名前を、知らない?
でも、どうして出席番号を。
可笑しくなってきた。
私のことを好きな人は、私の名前を知らなくて、私の出席番号だけを知っている人。
ってことに、なるけど。
私は、そこではっとした。
もしかして、一目惚れ!?
あり得る。
だったら、すべてのことに筋が通る。

つまり、廊下とかですれ違って、そのときに黒川くんっていう人が、私に一目惚れ。すれ違うときにでも、聞き耳をたてたのか、私の出席番号を知る。
で、私の下駄箱の位置を知り、この小さなラブレターを入れた。
って、いうことか。
でも、出席番号が分かるような話なんて、一度もして...
あ!
出席番号を当てるクイズだ!
たしか、そのときは。