保健室はまたも先生不在で

ここの保健医は何してるのよ!と

心の中で悪態をついた私。

手を引かれ、座らされた椅子の

前には、大きな身体をした

日下部くんがしゃがみ込んで

私を見ている。

「で、さっきのはどういう意味?

呼び出しってなに?」

下を向く私に怒りを滲ませた声が

聞こえて、私は縮こまる。

その時、日下部くんの大きな手が

私の頬を持ち上げ

ジッと見つめて

言わないと逃がさないと

言わんばかりの表情で

「言うまで離さないけど、

それでもいいの?」と

日下部くんは私を追い込んでいく。

うっ…やっぱり…

でも、告げ口みたいで嫌なんだよね…

その時だった…

ガラガラッ!!

「花宮さん、大丈夫!?」

大きな声で息を切らして

入ってきたのは南野さんだった。

「えっ…風花!?…と蓮司!?」

日下部くんの手が頬から離れ、

入ってきた2人に驚いている。

私も驚いた…

南野さんだけでなく羽柴くんまで…

「お前ら、何でここに…」

立ち尽くす日下部くんには

目もくれずに私の元に

駆け寄ってくる南野さん。

一体全体、どういうこと?

「隣のクラスの友達が

花宮さんが陽人のファンに

突き落とされるの見たって聞いて…

大丈夫!?怪我してない!?」

え…その為にここに来てくれたの?

友達でもない私の為に?

「…うん、平気。

日下部くんが助けてくれたから…」

途端に大きく息をつく南野さんは

いきなり私の制服の袖を捲り上げた。

え?な、な、なに!?

混乱する私をよそに南野さんは

大きく溜め息をついた。

「やっぱり…

これ、誰にやられたの?

陽人のファン?」

「え…いや、あの…」

混乱して言葉が出てこない私に

南野さんが抱きついてきた。

え?な、なに?

「気付いてあげられなくて

ごめん…

痛かったでしょ?」

私を抱きしめる南野さんは

少し震えていて涙声で…

やっぱり南野さんは

優しい人だって思った。

そんな南野さんに

私はただ首を振る事しか

出来なかった。

「嘘だろ…俺のせい?」

力なくその場にしゃがみ込んで

しまった日下部くんに

南野さんの鉄拳が落ちた。

ゴッ!!

わわ、痛そう…

「陽人にお姫様抱っこされた翌日から

花宮さんは陽人のファンに

休み時間のたびに呼び出されて

殴られてたんだよ!

挙句…

今日は突き落とされた!

あんたのそういう考え無しの行動が

花宮さんを傷付けたの!」

私の為に取り乱し、怒る南野さん。

そして、私のせいで苦しみの

表情を浮かべる日下部くんに

やっぱり私と関わると良いことなんて

ないと改めて思った。

こんなに優しい人達に

私は関わってはいけない…

「南野さん、私は大丈夫だから…

日下部くんも、気にしないで?

でも…

もう私に関わるのはやめてほしい。

ごめんね…」

私の言葉に固まる3人に

私は頭を下げ、保健室を出た。