【短編】本日、総支配人に所有されました。

お互いに大卒の新入社員で、最初の一年は研修期間だから各部署を回ったらしい。


一年後の配属先は支配人はフロント、星野さんはレストランサービスに決定された。


支配人のルックスは女性の目線を釘付けにし、特におば様達のファンが多く、顧客を獲得した上に仕事熱心の真面目君だから、上役にも気に入られて、若くして支配人を任されたらしい。


「ありえない位のスピード出世だな、とは思うけど…上役も見る目あるよなって思ったよ」と話の終わりに星野さんは付け加えた。


星野さんの話に妙に納得がいく部分があった。


確かに支配人のルックスは女性の目を惹き、仕事熱心なところにも共感出来る。


顧客を獲得する為の入口が、自分のルックスだとは支配人は自覚してないだろうけれど・・・。


「アイツさ、最初は緊張してお客様にロクに挨拶出来なくて、フロントマネージャーに鏡の前で『いらっしゃいませ』の練習して来い!って言われて必死で練習してた。そしたら、いつの間にか…女性を惑わす流し目と微笑みを習得してたんだよね!」


星野さんが面白おかしく話すので、私達は緊張感も忘れて吹き出してしまう。


支配人とは違い、気さくに話せる方で休憩後も楽しく仕事が出来た。


三百枚以上のナフキンを扇型に折り、皿を並べた上に広げた。


支配人が戻って来た頃に一段落がついて、定時時間が近付いている事に気付く。