「なっちゃんお待たせ〜!」
「もー遅いわよ!早く着替えないと間に合わないよ!ゴリラ怒ると怖いんだから」
ゴリラみたいな顔にガタイのいい身体、さらには真っ黒の肌から体育教師の菅野先生はそう呼ばわれているのだ。
そして本当に怖い。
なっちゃんに言われ急いで着替えを済ませて体育館に向かった。
***
「間に合ってよかったね」
「ちょー危なかったけどね。もう、ヒナのせい」
「ごめんごめん」
今日の授業内容はバレー。
チームごとに分かれて試合で私達の試合はあと二つ先。
試合を見ながらなっちゃんと座る。
さっきの啓介の話をした。
「立花がいないとヒナはダメダメになっちゃうね」
「えー、そんなことないもん」
「でも、そういう関係羨ましいかも」
「どうして?」
「私、ずっとイガと付き合ってるけど、イガのこと全然わかんない」
「付き合うって難しいんだね」
「そうだねー。最初だけよ、楽しいのなんて」
そうは言いつつも、なっちゃんはイガさんの話をしている時はいつも幸せそうな顔をしている。
私の方が羨ましいな…。
「ヒナって付き合ったことないってことはキスもまだしたことないの?」
「き、キス…っ!?ちょっとなっちゃん!」
「何よ〜、高校生なら普通だと思うけどな」
「し、したことないよ…」
「ヒナの初めての彼氏は幸せ者になりそうね」
なっちゃんが笑った。