「ヒナ、傘いれて」

「なんで朝から雨なのに持ってないの?」

「壊れた」

「もう…」



啓介が私の傘を持つ。

傘にぶつかる雨の音が…結弦君のことを考えさせる




「ほんとすげー雨だな」

「うん…」



こんな雨の中に結弦君がいるとしたら…



だめ。

もう会わないって決めたんだよ。



考えちゃダメなの。



「ヒナ…最近元気ねーな」

「そんなことない…」



啓介はきっと、気づいてる。

私が今、ほかの誰かのことでいっぱいだって。



だけどそれを言おうとしないのは、

私のことを本当に好きだから…



私も同じだ。

結弦君のことが本当に好きで、

なっちゃんと結弦君の狂った歯車を直す手助けをしないまま、自分勝手に逃げた。



逃げることでしか自分を守れない。



そんなのーーーーーやっぱり嫌だ。