はあ… はあ…

走ったせいで息が切れる。


傘もささずにボールを蹴っていたのだろう。
ずぶ濡れになっている。


俯いている結弦君に傘を向けた。



「どうしたの?」

「…泉こそ、どうして」

「結弦君のボールの音が聞こえて…」

「なにそれ…すげえ…」

「そんなことより、風邪ひいちゃうよ…」

「泉…俺…」



結弦君の頭が低くなる。

しゃがみこんでしまった。



どうしたの?何があったの?

聞きたいけど、これ以上聞いたらいけないような気がする。



「ゆ、結弦君!こっち!」



結弦君の手を掴んでベンチに座らせた。



「泉、手…」

「わ…!!!ご、ごめんなさい!」

「いやそうじゃなくて…怖いって…」

「あ…どうしてだろう…衝動的だったから…」



しばらく沈黙が続いた。


もしかして…引いてる?



「はははっ」



結弦君!?!?



「ごめんごめん。泉は面白いな」



結弦君が微笑む。

ーーートクン。

まただ。鼓動が早くなる。



手が震えてる。

緊張ーーーーーしてるーーー

どうしてーーー?



「一瞬だったけど、泉の手すげえ小さかった。小人みたい」

「そ、そんなに…?」

「俺の手結構大きいんだよ」



結弦君が手のひらをあげてこちらに向けた。

大きな手のひら…

ーーーー触れたい



そっと自分の手のひらを重ねた。