軽く片付けてから啓介を部屋に入れた。

お母さんは出かけているみたい。



「何か飲む?」

「んーお茶」

「待ってて、持ってくるね」



部屋に入ってから啓介はほとんど話していない。
俯きながらぼーっとしている。

変なの。




「はい、持ってきたよ。さっそく宿題やっちゃお」

「…ん」



やっぱりおかしい。

こんなの啓介じゃない。



「さっきからどうしたの?」

「…ヒナは、どうもしない?」

「え?どういうこと?」

「俺は………すげえ、緊張する」



き、緊張!?

なにそれ?なんで?

私たち二人きりなんていつものことなのに。



「ヒナの部屋に入ったのも久しぶりだし…」

「でも今更そんな…」

「抱きしめてもいい?」



えっ、まってよ!



「ま、まって、まって啓介」

「なんだよ」

「私達手すら繋いでないし…」

「じゃあ手出して」

「ま、ま、待ってよ!私達…」



幼馴染じゃん、と喉まで出かけた言葉を飲み込んだ。


違うんだ…

私達はもう、幼馴染じゃないんだ。



急に怖くなった。

目の前にいる啓介が周りにいる男の子たちと同じように見えてくる。



少しずつ近づいてくる啓介。


「まっ…」


待って!!!!!!!

叫ぼうとした。



「ただいま〜。あれ、啓ちゃん来てるの?」



お母さんの声がした。