「おとこおんな〜!」

「うるっさい!!!!」



掃除中、男子達からの罵声を聞いて
持っていたほうきを思いっきり振り回した。




「こえー!!!!」

「待ちなさいよ!!!!」




チビでデブのガキ大将の首元の服を思い切り掴んだーーーーーーーあいつが。





「いい加減にしろ」

「げ、イガ」

「お前らなんでいつも名月のこと困らせんだよ」

「べ、別に…」




小学五年生になって、周りの男子も少しは大人になるかと思っていたのにクラス替えで一緒になった男子達はみんなクソガキばかり。


なのにこの五十嵐結弦だけは違う。


いつも私を助けてくれて、どの男達よりも背が高く顔立ちも中学生みたいだ。




「名月も、ほうき振り回したら危ないだろ?」

「わ、わかってるわよ」



いつも男子と話す時は下を向いて話すのに
こいつは私よりもずっと背が高く上をむく

だからかな

すごくすっきりした気持ちになれる





「名月、あのゲーム買った?今週発売した」

「え?ああ…うん、買ったよ」

「まじで?やりてー!」



ふふっと自然に笑えてしまった。

こんな大人っぽいのに、
こういうところは普通の小学生男児と変わらない。




「うちにやりにくる?」

「え、まじで?」




そんなこんなでイガが我が家に来た。

イガもほかの男の子達も、なんだかんだでうちによくゲームをやりにくる。


両親は今日いない。




「はい、お茶どうぞ」

「お、サンキュー」

「今日はありがとね」

「毎日毎日仲良しだよな」

「はあ!?そんなわけないでしょ!」

「でもほぼ毎日一緒に遊んでんだろ?掃除の時間は喧嘩してるけど」

「それは…まあ…」



あんなんでも普段は面白いし楽しいやつばっかり。

でも、イガもそのうちの一人だと思う。



いや、イガだけは特に特別な……なんだろう。





「くっそー名月つえー」

「これで7連敗だね、イガ」

「もう一回!」

「ちょっと休憩しようよ」



お茶を組み直そうと立ち上がった時
ずっと正座していた足がもつれてコップを床に落としてしまった。



ガシャンっ



床にガラスの破片が散らばる。




「いた…っ」



小指から少量の血が出てきた。





「おい、バカ!大丈夫か!?」



すぐさま私の小指を手に取り部屋にあった消毒液で消毒、そして絆創膏までしてくれた。




「はい、おっけー。他に怪我したとこないか?大丈夫か?」




周りの男子と違う。

みんなきっとこういう時馬鹿みたいに笑い転げるんだ。




「おい、名月。聞いてる?」



なのに何その目。

心配してますって顔に書いてある。




「ちがう…」


周りの男子と違う…



「……え?」



ああ、そっか。




私ーーーーーー





「私、イガのこと好きなんだけど」




ぶっきらぼうに言う。

本当に可愛くない。


世界一可愛くない愛の告白だ。




それなのにイガの長く綺麗な腕が伸びて

私達の唇は重なった。



おままごとじゃない。

大人の真似っ子じゃない。



子供だけど、こんなにもドキドキしてる。



これが、恋なんだーーーーー。