「けーいすっけ!」
後ろから思い切り肩を叩かれる。
「おう、ヒナ」
「帰ろう?」
隣を歩きながらいろんな話をしているヒナ。
その横顔が夕日に照らされて綺麗に映る。
中学に入ってから少し大人びたようにも見えるけど
くりくりして大きく真ん丸な目はやっぱり童顔だ。
無防備なヒナはいつだって俺を煽ってくる。
そして俺はそんなヒナを目の前に理性と戦うのだ。
「あ、そうだ。この間駅前に出来たファミレス行かない?割引券持ってきたの」
「お、いいな。いこうぜ」
俺とは普通に話せるヒナだけど、
俺以外の男になると急に無言になってしまうんだ。
「ご注文いかがなさいますか」
高校生くらいの男の店員さんが注文を取りに来た。
ヒナは顔を真っ赤にして下を向いている。
ーーーーーやっぱりな
「じゃあ、これとこれで」
「かしこまりました。お待ちくださいませ」
「……ほら、いったぞ」
「へへ…ありがと…」
本当にこいつは手のかかるやつだ。
子供の頃からずっと。
ずっと見てきた。
「やっぱり啓介は幼なじみだから話せて楽しいな」
「ヒナ…」
「ん?なあに?」
今はまだ、幼なじみ。
今はまだ、異性に下を向くヒナ。
だけど。
だけどいつかーーーーーー
俺だけのために上を向いてよ。
ヒナ。

