私が好きになった人が結弦君じゃなかったら
今でもなっちゃんと笑い会えていたのかな
クラス替えで離れて悔しがったり寂しがったり
文化祭で同じ係になって二人で回ったり
好きな人の話で盛り上がったり
でもね。
「結弦君じゃなきゃ、好きにならなかった」
結弦君だから、好きになった。
わかるんだ。
この先何年経っても、結弦君以外好きになる人なんていない。
恋に臆病だった私が初めて自分から好きだと思えた人。
「心の中で笑ってたっていうのも、ヒナがそんなつもりで私の話を聞いてないことくらい分かってた」
「…え?」
「ヒナはそんな子じゃない。そんなことできない。そんなの私が一番知ってる。
だからこそ、裏切られたって思ったのよ…!」
嗚咽を漏らすなっちゃん。
「なっちゃん。私、今まで色んなことを譲ってきた。
どうしても手に入れたいものなんてひとつもなかった。
給食で出た好きな食べ物でも、欲しいって言われれば何でも人にあげてきた。ーーーーだけど」
しゃがみこむなっちゃんの前に同じようにしゃがみ込んだ。
「結弦君は、渡したくない!渡さない。もう私、逃げない。なっちゃんが相手でも……戦いたい!」
譲れないものが、私にもあるって
初めて知ったからーーーーー
「結弦君が好きだから」

