ぐいっ！
暗闇の中で彼女の腕を引く。
そのまま抱きとめ、不思議の国へ転がり込んだ。
ドサッ！
彼女が、僕の腕の中で小さく「っ！」と呼吸をする。
辺りを包む靄が、一瞬で晴れた。
ぱらぱらと数えきれないトランプが四方八方に飛んでいく。
「…ふぅ…」
息を漏らすと、彼女がふいっ、と顔を上げた。
９年の時を超え、交じわる視線。
彼女は、昔の少女のままだった。
「…今、僕の名前を呼んだでしょ？」
彼女の瞳が見開かれた。
そっ、と彼女を抱きとめる腕に力を込め、低く囁く。
「まさか、僕を追いかけて来ちゃったの？イケナイ子だね、アリス。」
────
───
──
…これは、アリスがシンデレラの仮面を被る９年前。
全ての始まりの物語。
