幼いながらも彼女を守ろうとする鋭い視線に、少し微笑ましくなりながら僕は答えた。


「そんなに警戒しないで。僕はウサギ。」


「えっ!ウサギ?あははっ!変な名前!」


けたけた笑う少女に、いっそう疑いが強くなった様子の少年。


「…ありすと、どんな関係なの?家族?」


僕は彼の質問にくすり、と、笑って言葉を続けた。


「んー…、“アリス”は、僕の妹みたいなものかな。」


「!」


こっそり答えた言葉に、少年は驚いて目を見開く。

すっかり信じ切ったような瞳に少しの罪悪感を覚えたが、誘拐犯扱いされるよりはマシだ。


「あっ!そうだ、ゆうくん。そろそろ出発しよう!」


(?)


少女がキラキラした瞳で声をあげた。

「どこかに遊びに行くの?」と尋ねると、彼女はにっこりと笑って答える。


「“ひみつきち”があるの!図書館を出たところの森にね!」


(“秘密基地”か。子どもらしいな。)


くすり、と笑うと、少女は僕の服を掴んで言った。


「ウサギさんも一緒にいこ!」


「「えっ!」」


少年とともに声を上げる。


「せっかく友だちになったんだもん!いいでしょ?」


“新しい友だち枠”として認識されたらしい僕は、こうして小さな2人組の“保護者”となった。

やれやれ、と気まぐれに付き合っていたこの関係が、やがて大きな騒動を巻き起こすなんて、この時の僕は想像すらしていなかったのだ。