どくん、と胸が音を立てた。

驚いて顔を上げると、本棚の上に小さな女の子がのぼっていて、こちらを見つめている。


(…!)


僕は、彼女を見つめて口を開く。


「…ふふ、そんなとこにのぼっちゃ危ないよ?」


「あっ、ごめんなさい。」


すとん、と降り立った少女を見て、思わず言葉を失った。

黒い髪に、ぱっちりとした瞳。

人間のフリをしていたエラにそっくりだ。

図書館での出会いにデジャヴを覚えていると、少女は僕を覗き込んで尋ねる。


「シンデレラがすきなの?」


「えっ。」


「だって、とっても大事そうに見てるから。」


純粋な瞳が僕を映した。

何気ない彼女の言葉が、僕の胸を震わせる。


「…うん。好きだよ。…なによりもね。」


ぽつり、と無意識に声が出た。

やけに真面目に答えてしまった。

はっ、として彼女を見た瞬間、少女はにこっ!と天使のような笑みを浮かべる。


「そうなんだ!私といっしょだね…!私も、童話の中でシンデレラが一番好きなの!」


(!)